ガンが再発するという事
手術、抗がん剤、放射線というガン治療3点セットを終了し、あとは毎日のホルモン剤治療のみとなった頃から、再発•転移への不安が強くなった。
治療を受けた癌研有明病院は、定期的に局所再発の検査はするが、転移に関する検査は一切しないということだった。
以前は、骨シンチとか、CTとか、転移の検査も定期的にやっていたが、厚生労働省の指導があり、2019年あたりから、やらないことになったという。
初めてそれを聞かされた時は、なんて冷たい、なんて不親切なと、病院から突き放されたような気持ちになった。
しかし、再発転移が比較的低い乳がん患者の転移検査を、全て保険医療で賄うとなると、財政が破綻してしまうので、仕方がなかったのだろう。
乳がんは、肺、肝臓、骨、脳に転移しやすい。
でも、病院で検査はしない。
結局、自分で、人間ドッグなり、健診なりを定期的に受けて、自衛するしかないということだ。
手術から一年くらい経った頃、近くの乳腺クリニックの女医に、いち早く再発転移をみつけるにはどうすればいいか、を相談に行った。
女医曰く、結局、乳がんは転移したら、もう治ることはないので、早く転移を見つけても、生存期間にかわりはない。
早く見つけたら、その分、抗がん剤治療の期間が長引くだけなので、早期発見にはあまり意味がない。
あとは、哲学の問題だから、と。
よくわからなかった。
乳がんの転移は、抗がん剤を使っての延命治療しかないということ?
何度か、聞かされた言葉だが、その時も、素直に受け入れることは出来なかった。
というより、受け入れたくなかった。
医者から"哲学の問題" 等という言葉も聞きたくなかった。
あれから時間が経って、少しずつ、"そのこと'' を受け入れるられるようになった。
転移したら、すぐに死ぬことはないけど、抗がん剤治療をしながら5年、運が良ければ10年ほどは、癌と共存しながら生きていけるということ。
あるいは、運命と受け入れ、無治療で、最後だけは痛みを取るための終末医療を受けて、2年くらいで、寿命を全うするか。
現実的には、その二択。
悲しいけど。
どちらを選ぶにしても、死ぬまでは生きていかなきゃならない。
心を病に絡め取られることがなく、残された貴重な時間を、自分らしく生きていくことは出来るのか?
今日、アマゾンのレンタルでノマドランドを観た。
肺がんが脳に転移しながらも、病院で死ぬことを選ばず、アラスカへの旅立っていったノマドの老女、スワンキーに自分を重ねてしまった。